アンパンマンのうさぎ

世の中の先輩に教えてほしいこと 文化構想学部

この障害が注目されるのは…







熊谷:この半世紀ぐらいを振り返って見ますと、例えば私が生まれたのは1977年ですが、当時は脳性まひ——つまり私の障害です——がすごくブームで。脳性まひは脳の損傷によって手足が動かないという障害なのですが、「なるべく早く発見しなきゃ」「なるべく早く治療を開始しなければ将来によくない」と活発に言われていました。

今はそれが少し下火になって、日本では1990年代ごろから徐々に発達障害というものが注目されるようになって、診断数もうなぎのぼりに増えていった。けれど、総数としてはそれほど大きくは変わらないはずなんですよね。

昔からずっと、今日なら発達障害とされる人はいたはずです。時代によって注目される障害が変わる。これが何を表しているかというと、決して各障害の人口構成が変わったわけじゃなくて、世の中の規範が変わった。
出典 日本社会ではいま「多数派」が一番苦しい? 二極化の先にあるもの(小野 美由紀) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)


つまり、恐らくその時々によって、社会に必要とされる人間の定義が変わってきている。脳性まひが問題とされた時代は高度経済成長というか、言われたとおりに黙々と決められた生産ライン——つまり製造業ですよね——で働き続ける人間像が理想とされた
しかし、今はそういう仕事は機械がやってくれる時代ですから、人間はもっと違うことをやりなさいと。例えばコミュニケーションであるとか発想力であるとか、言われたことをベルトコンベア方式でこなす人間ではなく、自立性が求められるようになるわけです。

そうすると今度は、かつては「黙々と働くことが得意」とか「こだわりが強くて職人気質」とか呼ばれて賞賛されたかもしれない人たちが「障害」のレッテルを貼られやすくなります。
出典 日本社会ではいま「多数派」が一番苦しい? 二極化の先にあるもの(小野 美由紀) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)


小野:コミュニケーションが重要視される社会になったからこそ、それがうまくできない人が「規範」からあぶれて、目立ってしまうということでしょうか。

熊谷:おそらくそうでしょう。「社会が望む人間像」と「障害者」と呼ばれる人間像は、ポジとネガの関係です。社会の変化に従い、障害者の範囲も常に変化するものです。


小野:「コミュ力」とか「コミュ障」とか盛んに言われ始めたのもSNSが流行り始めてからですし、社会の要請によって「だめ」のレッテルが貼られる対象も変わるということですね
出典 日本社会ではいま「多数派」が一番苦しい? 二極化の先にあるもの(小野 美由紀) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)


日本社会ではいま「多数派」が一番苦しい? 二極化の先にあるもの(小野 美由紀) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)






発達障害と社会 - NAVER まとめ